「90%オフ」「驚きのセール、100円以下」「無料ギフトを3つ獲得」――このような破格の広告が目立つ中国発のECサイト「TEMU」。今や日本のテレビCMにも登場し、多くの消費者の注目を集めています。このサイトの専用アプリをダウンロードすれば、驚くほど安価な商品が次々に目に飛び込んでくるため、価格のあまりの低さに「詐欺ではないか?」と疑う人もいるかもしれません。
しかし、こうした激安商品の多くは、もともと中国国内市場で流通していたもので、それが国外に向けて販売されるようになったにすぎません。日本の消費者にとって、Amazonや楽天といった主要ECサイトで慣れ親しんだ価格帯とは大きく異なり、「なぜここまで安いのか」と疑念を抱くのも無理はありません。しかし、中国国内では、これらの価格は特に珍しいものではなく、一般的な水準です。
例えば、170円前後で販売される男性用ボディバッグや、700円程度のワイヤレスイヤホンといった商品。これらは同じような価格帯で中国のサイトでも見つけることができ、その多くはノンブランド品です。中国は大量生産力に優れ、格安商品を次々と市場に投入してきました。これに加え、輸送コストを極限まで抑える仕組みを取り入れたことで、海外にもこの低価格を実現できるようになっています。
このような事情から、「TEMU」のような新興ECサイトは、すでに世界中で多くの購入者を獲得しており、特に欧州では、一部の商品が偽造品や著作権侵害に関わる問題を引き起こしているとして、規制の動きが見られます。しかし、これに関してはAmazonでも同様の事例が報告されており、大手企業による市場支配に対する対抗策と捉えることもできるでしょう。
実際に筆者も「TEMU」を利用したことがあります。確かに、その価格の安さには目を見張るものがありますが、当然のことながら品質に関しては懸念が残ります。例えば、Tシャツの生地が非常に薄く感じられたり、製品の不良が多かったり、届いた商品が梱包されていた箱が潰れていたりすることもありました。これは「安かろう悪かろう」という典型的な例と言えるでしょう。
とはいえ、これらの問題にもかかわらず、多くの人が「TEMU」を利用し続ける理由は、その圧倒的な安さに他なりません。消費者にとって、多少の品質低下やリスクを覚悟してでも、安く購入できるというメリットが勝るのです。結局のところ、選択は消費者次第であり、何を優先するかによって「TEMU」の価値は変わってくるでしょう。
TEMUのような新興ECサイトの登場は、今後も続くでしょう。消費者としては、利便性やコストパフォーマンスを重視する一方で、商品やサービスに対する批判的な目も必要です