セルフレジの普及とAI化の加速
近年、私たちの生活の中でAIや自動化技術の進化を実感する場面が増えています。その代表例の一つが、スーパーマーケットのレジの変化です。かつては、店員が商品をスキャンし、袋詰めを手伝ってくれるのが一般的でした。しかし、今ではセルフレジが急速に普及し、買い物客が自分で精算を行うのが当たり前になりつつあります。
2023年の調査によると、セルフレジを導入しているスーパーはすでに全体の78.2%に達しており、今後も増加傾向が続くと考えられています。現在、多くの店舗で導入されているのは「セミセルフレジ」という形式で、店員が商品をスキャンし、支払いのみを客が行うタイプです。しかし、将来的には完全なセルフレジへ移行する可能性が高く、より多くの業務が自動化されることが予想されます。
この流れは、単なる買い物の利便性向上にとどまらず、「仕事のあり方」にも大きな影響を与えています。すでに生活の一部として自動化が浸透している今、労働市場においてもAIの波が押し寄せてくるのは避けられないでしょう。
AIが人類を超える日は近いのか
AI研究の第一人者であるレイ・カーツワイル博士は、2045年にはAIが人間の知能を超える、いわゆる「シンギュラリティ」に到達すると予測しています。しかし、近年の技術の進歩を見れば、それよりも早くその時が訪れる可能性があると感じる人も多いのではないでしょうか。
実際に、ChatGPTなどの高度なAI技術が登場したことで、AIの発展スピードは加速しています。AIが完全に人間を超えるかどうかは議論の余地がありますが、少なくともAIが労働市場に大きな変化をもたらすのは間違いありません。そのため、AIの影響によって自分の仕事がなくなるのではないかと不安を抱く人が増えています。
従来、AIの開発状況や技術の進歩が話題の中心でしたが、最近では企業がどのようにAIを活用し、組織や人事のあり方をどう変えているのかに焦点が移っています。特に30代、40代の社会人にとっては、今後10年の間に職場環境が大きく変わる可能性があるため、キャリアの方向性を慎重に考える必要があるでしょう。
AI時代における仕事の変化
では、今後10年でどのような仕事がなくなり、どのような仕事が生き残るのでしょうか。
仕事を大きく分類すると、「意思決定を伴う仕事」と「作業的な仕事」に分けることができます。このうち、「作業的な仕事」はAIに置き換えられる可能性が高いと考えられます。言い換えれば、「自分で考えて決断する仕事」は存続し、「指示に従って行う仕事」はAIに取って代わられるということです。
現在の仕事を見渡してみると、同じ業界でも「自ら判断して動く人」と「指示を受けて動く人」が存在します。そして、収入や社会的地位に関係なく、単純な作業は今後急速に自動化されると考えられます。
例えば、プログラミングの仕事もその一例です。AIはすでに高度なコードを生成する能力を持ち、有料版のChatGPT-4などを活用すれば、多くのプログラムをAIが自動で作成できます。もし、月額20ドル(約3000円)のAIが大半のプログラミング作業をこなせるなら、それを大幅に超える価値を提供できない限り、高額な給与を維持するのは難しくなるでしょう。
この流れは、オフィスワークを中心とした「ホワイトカラー」の仕事にも及びます。事務職や経理、さらには社会的に権威のある職業である医師や弁護士の仕事にもAIの影響が及ぶと予想されています。
AIにはできないこととは
では、AIの発展によって消えていく仕事がある一方で、人間にしかできない仕事とは何でしょうか?
AIには膨大なデータを学習し、それをもとに最適な解を導き出す能力があります。しかし、AIが自発的に「何を創造するか」を決めることはできません。つまり、創造性や独自の視点が求められる分野では、人間の優位性が保たれる可能性が高いのです。
たとえば、文章の作成において、AIは文脈を理解し適切な単語を選ぶことができますが、「自分の考えをもとに新しいアイデアを生み出す」ことはできません。同様に、AIを搭載した絵描きロボットがあったとしても、「好きなものを自由に描いて」と指示されると、何も描くことができないでしょう。
このように、AIが得意とするのは既存のデータをもとに分析し、最適な結果を導き出すことですが、クリエイティブな発想を持ち、新しい価値を生み出すことは人間にしかできません。
AI時代に求められるスキルとは
AIが進化し続ける未来において、人間に求められるスキルは何でしょうか。
ひとつの答えとして、「創造性」や「問題解決能力」が挙げられます。AIが既存のデータをもとに最適な判断を下すことができる一方で、新しいアイデアを生み出し、柔軟に対応する能力は人間にしか備わっていません。また、コミュニケーションや交渉力といった、人と人との関わりを重視するスキルも、AIには代替できない重要な要素となるでしょう。
これからの社会で求められるのは、単に「仕事をこなす」だけではなく、より価値のある仕事を創り出す能力です。技術が進歩する中で、どのように自分のスキルを活かし、AIと共存していくかが、今後のキャリアを左右する鍵となるでしょう。
まとめ
AIの進化によって、多くの仕事が自動化されることは避けられません。しかし、その一方で、人間にしかできない仕事も確実に存在します。今後の社会において重要なのは、AIに取って代わられないスキルを磨き、自らの価値を高めることです。AIとの共存を前提に、これからのキャリア戦略を考えることが求められています。