Appleは新たなiPhoneモデル「iPhone XR(テンアール)」を発売した。このモデルは、ハイエンド機種であるiPhone XSシリーズと共通の体験を提供しながらも、より手頃な価格で多くのユーザーに新世代のiPhone体験を届けることを目指している。

筆者は、事前にiPhone XR(ブラック)を試用する機会を得たため、実際の使用感や上位モデルとの違いについて詳しく紹介したい。

高額化するiPhoneに対する現実的な選択肢

iPhone XSは999ドル(日本では10万円以上)から、さらに大画面モデルであるiPhone XS Maxは1099ドルからという価格設定となっており、多くのユーザーにとっては手が届きにくい存在だ。このような中で、より多くの人に最新のiPhone体験を提供するために登場したのがiPhone XRである。

iPhone XRの米国での価格は64GBモデルで749ドル。日本ではApple Storeにて、64GBが84,800円、128GBが90,800円、256GBが101,800円と、128GBモデルでも10万円を下回っており、コストパフォーマンスの高さが際立つ。

最新の操作体験と共通化された設計

iPhone XRでは、ホームボタンを排除したオールスクリーンデザインを採用し、iPhone XやXSと同様に、画面内のジェスチャー操作に完全対応している。また、顔認証機能「Face ID」を可能にするTrueDepthカメラも搭載し、高いセキュリティと利便性を両立している。

AppleはiPadなど他の製品でもホームボタンを廃止しつつあり、ジェスチャー中心のインターフェースへの移行を本格化させている。その一方で、従来の操作性を好むユーザー向けにはiPhone 8などが引き続き提供されている。

コスト削減と工夫された設計

iPhone XRとXSの最大の違いは、ディスプレー技術にある。iPhone XSが有機ELディスプレーを採用しているのに対し、XRではコストを抑えるために液晶ディスプレーが使用されている。この液晶は「Liquid Retinaディスプレー」と名付けられ、TrueDepthカメラによるノッチの存在やベゼルのデザインなど、見た目にも妥協のない仕上がりとなっている。

液晶ディスプレーの弱点である「黒の再現性」に関しても、iPhone XRは明るさ50%以下であればノッチ周辺との境界がほとんど気にならない設計となっており、実用上の差は感じにくい。

解像度と画面サイズのバランス

iPhone XRの解像度は1792×828ピクセルと、フルHDには達していないが、iPhone 8と同等の326ppiの画素密度を持ち、普段使いでの視認性には問題はない。iPhone 8までのモデルで画面の精細さに不満を感じていなければ、XRでも十分満足できるはずだ。

また、6.1インチという新たな画面サイズは、従来の5.8インチモデルではできなかった画面分割表示にも対応しており、横向き使用時にメニューとコンテンツを同時に表示できるなど、実用性が向上している。

まとめ

iPhone XRは、Appleの新しいビジョンを多くの人に届けるために設計されたモデルだ。上位機種の体験をそのままに、価格を抑えながらも機能面での妥協を最小限に留めている。

コストと性能のバランスが非常に良く、ホームボタンのない操作やFace IDの快適さなど、最新iPhoneの魅力を手に入れたい人には、間違いなく「買い」と言える選択肢だ。